サルコペニアとは?
サルコペニアは加齢により筋肉量の減少、筋力の低下、身体能力が低下した状態をさします。
サルコペニアの診断は
筋肉ほど加齢で減少の著しい臓器はないともいわれています。四肢の筋肉量の合計を 身長(m)の 2 乗で割った値を骨格筋量指数(Skeletal Muscle mass Index:SMI)と呼び、筋肉の量の評価値として用います。
握力低下(男性28 kg未満、女性18 kg未満)、歩行速度低下(1.0 m/秒以下)のいずれかまたは両者を満たし、骨格筋量指数、SMIが男女別のカットオフ値未満の場合にサルコペニアと診断されます。
(注)日本サルコペニア・フレイル学会で骨格筋量や歩行速度を測定せずにサルコペニアの可能性が診断できる基準が新たに作成された。確定診断には「筋力:握力」「身体機能:歩行速度」「骨格筋量」の測定が必須である。AWGS(2019)診断基準の改訂により、男性の握力低下は26 kg未満から28 kg未満へ引き上げられ、また男女とも6m歩行速度が秒速0.8m未満から1.0m未満へ引き上げられた。国内の基準では「身体機能」測定は歩行速度測定の代用として5回椅子立ち上がりテスト、または簡易身体機能バッテリー(SPPB)も選択可能。「骨格筋量」測定はDXA法かBIA法が選択される。
さらに4分類することも提唱されています(PMID:28676289)。
正常:握力、歩行速度正常・筋量正常
プレサルコペニア:握力、歩行速度正常・筋量低下
サルコペニア:握力、歩行速度低下・筋量低下
ダイナペニア:握力、歩行速度低下・筋量正常
すなわち、握力や歩行速度の低下がなくても筋量(SMI)の低下しているかた(プレサルコペニア)や、握力や歩行速度の低下があっても筋量(SMI)が正常なかた(ダイナぺニア)があります。
ダイナぺニアでは筋肉の量は正常でも脂肪の浸潤など筋肉の質の低下が、筋力機能の低下を引き起こすとされています。
サルコペニアと骨粗鬆症の関係は?
股関節骨折を発症した高齢白人女性患者の半数近くがその骨粗鬆症とサルコペニア両方を有していたとの報告があります (PMID:20207030)。
高齢男性においても同様にサルコペニアと低骨密度(骨粗鬆症)が相関するとの報告があります(PMID:25926116)。
高齢者の骨粗鬆症や骨折後の管理はオステオサルコペニアとして、骨と筋肉の双方を対象にしていかなくてはなりません(PMID: 26563287)。
サルコペニアも骨粗鬆症もオステオサルコペニアも、DXAを使用して骨と筋肉、両方の検査を同時に行うことが可能です。
サルコペニアの治療は?
抵抗運動などを基本とした運動は筋量、筋力、運動能力に対して概ね有効です。
日本人では大腿部の筋量と筋質に男女差があり、高齢男性ほど量も質も加速度的に低下することがわかっています(PMID:34009738)。
筋力の発揮には筋量も筋質も重要な働きをしています。
60歳以上のサルコペニアにおいては、運動は、身体能力に大きな影響を示し、筋力に中程度の影響を示しました。一方で筋量に対しては一定の影響はありませんでした(PMID: 34029642)。
蛋白補給などの栄養は有効です。
当クリニックでは個々の状況に応じ、治療を提案させていただきます。